社会福祉法人の決算書の読み方・作り方|3つの計算書類を徹底解説
社会福祉法人の決算書とは?必要な書類の全体像
社会福祉法人の決算書は、一般企業の財務諸表とは異なる独自の体系を持っています。社会福祉法第45条の27では、毎会計年度終了後3か月以内に計算書類を作成することが義務づけられています。
社会福祉法人が作成すべき計算書類は、大きく次の3種類です。
- 資金収支計算書 --- お金の流れを示す書類
- 事業活動計算書 --- 事業の損益を示す書類
- 貸借対照表 --- 財産の状態を示す書類
これらは「財務三表」と呼ばれ、企業会計でいう「キャッシュ・フロー計算書」「損益計算書」「貸借対照表」にそれぞれ対応します。
さらに、社会福祉法人会計基準(第7条の2)では、計算書類を法人単位・事業区分別・拠点区分別の階層で作成するよう定めています。ただし、事業区分が社会福祉事業のみの場合や、拠点区分が1つの場合には、一部の内訳表を省略できます。
計算書類のほか、附属明細書、財産目録、事業報告もあわせて作成が必要です。
資金収支計算書の読み方と作成ポイント
資金収支計算書は、会計基準第12条において「当該会計年度における全ての支払資金の増加及び減少の状況を明瞭に表示するもの」と定められています。
企業会計のキャッシュ・フロー計算書に近い位置づけですが、対象となる「支払資金」の範囲が独特です。会計基準第13条では、支払資金を「流動資産と流動負債の差額」と定義しつつ、引当金や棚卸資産(貯蔵品を除く)などを除外しています。
3つの区分
資金収支計算書は、次の3つに区分されます(会計基準第15条)。
- 事業活動による収支 --- 介護報酬や措置費など、日常の事業運営に関わる収支
- 施設整備等による収支 --- 建物の取得・売却、施設整備補助金などの収支
- その他の活動による収支 --- 積立資産の積立・取崩し、借入金の借入・返済など
読み方のポイント
最終行の当期末支払資金残高が、貸借対照表の流動資産から流動負債を差し引いた額(ただし上記の除外項目を除く)と一致するかを確認しましょう。三表の整合性チェックの基本です。
事業活動計算書の読み方と作成ポイント
事業活動計算書は、会計基準第19条で「当該会計年度における全ての純資産の増減の内容を明瞭に表示するもの」と規定されています。企業会計の損益計算書に相当しますが、利益ではなく**「活動増減差額」**で表現される点が特徴です。
4つの区分
事業活動計算書は、次の4つに区分されます(会計基準第21条)。
- サービス活動増減の部 --- 本業の収益(介護報酬等)と費用(人件費・事業費等)
- サービス活動外増減の部 --- 借入金利息や有価証券の評価損益など
- 特別増減の部 --- 施設整備補助金収益、固定資産売却損益、拠点間の繰入など
- 繰越活動増減差額の部 --- 前期繰越との合計を計算する部分
読み方のポイント
サービス活動増減差額がプラスかどうかが、本業の収支バランスを見る基本指標です。ここが継続的にマイナスであれば、事業運営の見直しが必要です。また、当期活動増減差額は、貸借対照表の純資産の部における次期繰越活動増減差額の増減と一致します。
貸借対照表の読み方と作成ポイント
貸借対照表は、会計基準第25条で「当該会計年度末現在における全ての資産、負債及び純資産の状態を明瞭に表示するもの」と定められています。決算日時点の財政状態を示すスナップショットです。
区分の構造
貸借対照表は、資産の部・負債の部・純資産の部の3つに分かれます(会計基準第26条)。
- 資産の部: 流動資産(現金預金、事業未収金等)と固定資産(建物、土地等)
- 負債の部: 流動負債(事業未払金等)と固定負債(設備資金借入金等)
- 純資産の部: 基本金、国庫補助金等特別積立金、その他の積立金、次期繰越活動増減差額
読み方のポイント
社会福祉法人ならではの注目項目は純資産の部です。企業会計にはない「基本金」や「国庫補助金等特別積立金」が計上されます。基本金は社会福祉法人の設立時の財産等を表し、国庫補助金等特別積立金は補助金で取得した資産の減価償却に合わせて取り崩されます。
決算スケジュールと注意点(いつまでに何をするか)
社会福祉法人の会計年度は4月1日から翌年3月31日です。年度末からの主なスケジュールは次のとおりです。
| 時期 | やるべきこと |
|---|---|
| 3月末 | 会計年度の締め、棚卸・残高確認 |
| 4月~5月 | 計算書類・附属明細書・財産目録・事業報告の作成 |
| 5月中 | 監事による会計監査 |
| 5月下旬 | 理事会での計算書類の承認 |
| 6月中 | 定時評議員会での計算書類の承認 |
| 6月30日まで | 所轄庁への届出、資産総額の変更登記 |
| 届出後 | WAM NETでの公表(インターネットによる公開) |
社会福祉法第45条の27第2項では「毎会計年度終了後3月以内」、つまり6月30日が計算書類作成の法定期限です。評議員会の開催日程から逆算してスケジュールを組みましょう。
決算をスムーズに進めるためのコツ
月次で試算表を確認する
決算期にまとめて処理しようとすると、ミスや漏れが発生しやすくなります。毎月の試算表で残高を確認し、不明な差異は都度解消しておくことが、決算作業の負担を大きく減らします。
三表の整合性を早めにチェックする
資金収支計算書の当期末支払資金残高と、貸借対照表の流動資産・流動負債の差額が一致するか。事業活動計算書の当期活動増減差額と、貸借対照表の繰越活動増減差額の増減が整合するか。この2つの整合性チェックは決算の要です。
附属明細書・注記も忘れずに
計算書類の本表だけでなく、借入金明細書や基本金明細書などの附属明細書、そして注記(会計方針、関連当事者との取引など)も法定の作成書類です。抜け漏れがないよう、チェックリストを用意しておくことをおすすめします。
制度改正への対応
社会福祉法人会計基準は改正が行われることがあります。最新の基準や通知を確認し、勘定科目や様式の変更に対応できる体制を整えておきましょう。
まとめ
社会福祉法人の決算書は、資金収支計算書・事業活動計算書・貸借対照表の3つの計算書類が柱です。企業会計とは異なる独自の体系を持つため、それぞれの書類の目的と読み方を正しく理解することが、適正な法人運営の第一歩となります。
決算は6月30日までに完了させる必要があり、監事監査や評議員会の日程も含めると、実質的な作業期間は2~3か月程度です。月次での帳簿管理と、三表の整合性チェックを習慣化することで、決算時の負担を大幅に軽減できます。
社会福祉法人の経理・決算でお困りのことがあれば、鯵坂税理士事務所にお気軽にご相談ください。社会福祉法人会計に精通したスタッフが、月次の帳簿管理から決算書の作成、所轄庁への届出までトータルでサポートいたします。