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社会福祉法人の収益事業とは?課税・非課税の判断基準をわかりやすく解説
税務

社会福祉法人の収益事業とは?課税・非課税の判断基準をわかりやすく解説

社会福祉法人は公益性の高い法人として、税制上さまざまな優遇措置を受けています。しかし、すべての事業が非課税というわけではありません。収益事業を行っている場合には、法人税をはじめとする税金が課されます。

この記事では、社会福祉法人の収益事業について、社会福祉法と法人税法の2つの視点から整理し、課税・非課税の判断基準や区分経理の方法まで、実務担当者の方にもわかりやすく解説します。

社会福祉法人の「収益事業」とは

「収益事業」という言葉は、社会福祉法と法人税法で意味が異なります。この違いを理解することが、正しい税務処理の第一歩です。

社会福祉法上の収益事業

社会福祉法第26条では、社会福祉法人は「その経営する社会福祉事業に支障がない限り」、収益を社会福祉事業や公益事業の経営に充てることを目的とする事業を行うことができると定めています。

つまり、社会福祉法上の収益事業とは社会福祉事業・公益事業の財源を確保するために行う事業のことです。駐車場経営や売店の運営など、法人が独自に行う営利的な事業がこれに該当します。

ポイントは、社会福祉法上の収益事業はあくまで「本業である社会福祉事業の財源づくり」という位置づけにあり、収益事業が本業を圧迫してはならないという点です。

法人税法上の収益事業(34業種)

一方、法人税法上の収益事業は、法人税法施行令第5条に限定列挙された34種類の事業を指します。社会福祉法人は法人税法上「公益法人等」に分類され、この34業種に該当する事業を継続して事業場を設けて行う場合に限り、法人税の納税義務が生じます(法人税法第4条第1項)。

34業種は以下のとおりです。

No.業種No.業種
1物品販売業18代理業
2不動産販売業19仲立業
3金銭貸付業20問屋業
4物品貸付業21鉱業
5不動産貸付業22土石採取業
6製造業23浴場業
7通信業24理容業
8運送業25美容業
9倉庫業26興行業
10請負業27遊技所業
11印刷業28遊覧所業
12出版業29医療保健業
13写真業30技芸・学力教授業
14席貸業31駐車場業
15旅館業32信用保証業
16料理飲食業33無体財産権の提供業
17周旋業34労働者派遣業

重要なポイントとして、社会福祉法上の「収益事業」と法人税法上の「収益事業」はイコールではありません。たとえば、社会福祉法上は社会福祉事業に区分される介護サービスであっても、法人税法上の34業種に形式的に該当するケースがあります。逆に、社会福祉法上の収益事業として行う駐車場経営は、法人税法上も収益事業(駐車場業)に該当します。

課税される収益事業・されない事業の具体例

社会福祉法人が行う事業であっても、法人税法施行令第5条の各号で非課税となる除外規定が設けられているものがあります。実務上、特に重要な除外規定は次の3つです。

非課税となる事業(除外規定あり)

  • 医療保健業:社会福祉法人が行う医療保健業は非課税です(施行令第5条第1項第29号ロ)。特別養護老人ホーム等に併設するクリニックの診療収入などが該当します。
  • 不動産貸付業:社会福祉法第2条第3項第8号に掲げる事業(生計困難者向けの無料低額な簡易住宅の貸付け等)として行う不動産貸付業は非課税です(施行令第5条第1項第5号ハ)。
  • 席貸業:社会福祉事業として行われる席貸業は非課税です(施行令第5条第1項第14号ロ(2))。

課税される事業の具体例

事業内容該当する業種課税の有無
自動販売機の設置収入物品販売業課税
法人所有の駐車場貸出し駐車場業課税
施設内売店の運営物品販売業課税
バザーの開催(継続的)物品販売業課税
施設の会議室を外部に貸出し席貸業課税(社福事業としてでない場合)
介護サービス(社福事業)非課税
保育事業(社福事業)非課税
併設クリニックの診療医療保健業非課税(除外規定あり)

なお、法人税法施行令第5条第2項第2号では、身体障害者や生活保護受給者等が従事者の半数以上を占め、それらの者の生活保護に寄与する事業については、34業種に該当しても収益事業から除外されます。就労継続支援事業(A型・B型)で行う製造販売等は、この規定により非課税となるケースが多くあります。

収益事業の区分経理のやり方

社会福祉法第26条第2項は、収益事業の会計を社会福祉事業の会計から区分し、特別の会計として経理しなければならないと定めています。

実務上の区分経理のポイントは以下のとおりです。

1. 事業区分の設定

社会福祉法人会計基準に基づき、法人全体の会計を「社会福祉事業」「公益事業」「収益事業」の3つの事業区分に分けます。収益事業を行っている場合は、収益事業区分に独立した拠点区分を設け、その中で事業活動計算書・資金収支計算書・貸借対照表を作成します。

2. 共通経費の按分

本部の管理費や施設の光熱水費など、複数の事業区分に共通する経費は、合理的な基準(面積比・人員比・使用時間比など)で按分します。按分基準は毎期継続して適用し、変更する場合はその理由を明確にしておくことが重要です。

3. 法人税申告における区分

法人税の確定申告では、収益事業から生じた所得のみを申告します。収益事業に直接対応する収入・費用だけでなく、共通経費の按分額も含めて損益を正確に計算する必要があります。

収益事業にかかる税金の種類と税率

社会福祉法人の収益事業に課される主な税金は以下のとおりです。

法人税

社会福祉法人は「公益法人等」として、収益事業の所得に対して**一律19%**の税率が適用されます(法人税法第66条第3項)。普通法人の23.2%と比べて優遇された税率です。

みなし寄附金制度

社会福祉法人には、収益事業の所得を非収益事業(社会福祉事業等)へ繰り入れた場合に損金算入できるみなし寄附金制度があります(法人税法施行令第73条第1項第3号ロ)。

損金算入の限度額は、次のいずれか大きい金額です。

  • 収益事業の所得金額 × 50%
  • 年200万円

たとえば、収益事業の所得が300万円の場合、150万円(300万円 × 50%)をみなし寄附金として損金算入でき、課税所得は150万円まで圧縮できます。所得が200万円以下であれば、全額を損金算入して課税所得をゼロにすることも可能です。

その他の税金

  • 法人住民税:収益事業を行う場合、法人税割と均等割が課されます(均等割は収益事業を行わない場合でも課される自治体があります)。
  • 法人事業税:収益事業の所得に対して課されます。
  • 消費税:社会福祉事業として行うサービスの多くは非課税ですが、収益事業の売上は原則として課税対象となります。

収益事業の会計処理で注意すべきポイント

社会福祉法と法人税法の「収益事業」を混同しない

最もよくある誤りは、社会福祉法上の事業区分と法人税法上の収益事業を混同することです。社会福祉法上は「社会福祉事業」に分類される事業であっても、法人税法上の34業種に該当すれば課税対象となる場合があります(ただし前述の除外規定に該当するケースも多い)。法人税の申告にあたっては、必ず法人税法施行令第5条の34業種に照らして判定を行ってください。

少額でも申告義務がある

収益事業の所得が少額であっても、収益事業を行っている以上、法人税の確定申告書を提出する義務があります。みなし寄附金制度を活用して課税所得がゼロになる場合でも、申告自体は必要です。

消費税の課税売上にも注意

自動販売機の設置手数料や駐車場収入など、収益事業の売上は消費税の課税売上にも該当します。社会福祉事業の非課税売上と合わせて、課税売上割合の計算にも影響するため、消費税の申告にも注意が必要です。

まとめ

社会福祉法人の収益事業は、社会福祉法と法人税法で定義が異なるため、まずこの違いを正しく理解することが重要です。法人税法上の34業種に該当する事業を行っている場合は、除外規定の有無を確認し、課税対象となる場合は適切に区分経理を行ったうえで申告する必要があります。

みなし寄附金制度を活用すれば税負担を大幅に軽減できますが、そのためにも日頃から正確な区分経理を行い、収益事業の損益を明確に把握しておくことが大切です。

「うちの法人の事業は課税対象になるの?」「区分経理のやり方がわからない」など、社会福祉法人の収益事業や税務についてお悩みの方は、社会福祉法人の会計・税務に詳しい専門家へご相談ください。鯵坂税理士事務所では、社会福祉法人の経理代行・税務顧問を承っております。お気軽にお問い合わせください。

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