社会福祉法人の理事会と評議員会の違い|招集・決議要件・役員改選
社会福祉法人の理事会と評議員会は、名前が似ていて混同されがちですが、まったく別の規律で運営されます。同じつもりで運営すると、決議が無効になることがあります。
大きな違いは次の3点です。
- 理事会は業務執行を決定し、理事の職務執行を監督し、理事長を選定・解職する機関
- 評議員会は役員の選任や計算書類の承認など、法令・定款で定められた事項を決議する機関
- 招集通知の方式、議題の記載義務、通知にない事項を決議できるかどうかが、条文レベルで異なる
この記事では、両者の違いを条文にさかのぼって整理し、役員改選の年に必要な段取りまで解説します。
理事会と評議員会の違い(早見表)
| 項目 | 理事会 | 評議員会 |
|---|---|---|
| 構成 | すべての理事(法第45条の13第1項) | 評議員 |
| 主な職務 | 業務執行の決定、理事の職務執行の監督、理事長の選定・解職(法第45条の13第2項) | 役員・会計監査人の選任(法第43条第1項)、計算書類の承認、定款変更等 |
| 招集権者 | 各理事。定款または理事会で招集権者を定めたときはその理事(法第45条の14第1項) | 理事(法第45条の9第3項) |
| 招集通知の期限 | 会日の1週間前まで(定款で短縮可) | 会日の1週間前まで(定款で短縮可) |
| 通知の方式 | 規定なし | 書面(電磁的方法は評議員の承諾が必要) |
| 議題の記載 | 法律上の義務なし | 必要(理事会の決議で定めた「目的である事項」) |
| 通知にない事項の決議 | 可能 | 不可(法第45条の9第9項) |
| 招集手続の省略 | 理事・監事の全員の同意があれば可 | 規定なし |
| 決議要件 | 議決に加わることができる理事の過半数が出席し、その過半数(法第45条の14第4項) | 議決に加わることができる評議員の過半数が出席し、その過半数(法第45条の9第6項) |
| 特別決議 | なし | 議決に加わることができる評議員の3分の2以上(法第45条の9第7項) |
以下、それぞれの根拠を確認します。
理事会の招集通知に議案書は必要か(法的義務の有無)
「理事会の招集通知に議案書を添付しないと違法か」という質問をよく受けます。
理事会については、法律上の義務ではありません。
理事会の招集手続は、社会福祉法第45条の14第9項が、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法人法」)第94条を準用しています。その第94条はこう定めています。
理事会を招集する者は、理事会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、各理事及び各監事に対してその通知を発しなければならない。 2 前項の規定にかかわらず、理事会は、理事及び監事の全員の同意があるときは、招集の手続を経ることなく開催することができる。
定めているのは「通知を発しなければならない」ということだけです。書面によるべきとも、議題を記載せよとも、議案書を添えよとも書かれていません。しかも第2項では、理事と監事の全員が同意すれば、招集手続そのものを省略できます。
会社法第368条と同じ構造です。理事会は出席した理事が議論して決める場であるため、あらかじめ議題を縛らない設計になっています。
ただし、法的義務がないことと、送らなくてよいことは別です。計算書類や財産目録を当日に配布されて、実質的な審議はできません。監事は理事の職務執行を監査する立場(法第45条の18第1項)であり、事前に資料を読む時間が必要です。
評議員会は招集時に定めた議題しか決議できない
評議員会は、理事会とは正反対です。社会福祉法第45条の9第9項を読みます。
評議員会は、次項において準用する一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第百八十一条第一項第二号に掲げる事項以外の事項については、決議をすることができない。
指し示されている一般法人法第181条第1項は、次のとおりです。
評議員会を招集する場合には、理事会の決議によって、次に掲げる事項を定めなければならない。 一 評議員会の日時及び場所 二 評議員会の目的である事項があるときは、当該事項 三 前二号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項
つまり、評議員会は、招集の際に定めた議題以外を決議できません。当日その場で「この件も決めておきましょう」は通用しません。決議しても無効です。
そして、その議題を決めるのは理事会の決議です。ここが実務の急所になります。
評議員会の招集通知は書面でなければなりません
さらに、通知の方式にも違いがあります。一般法人法第182条(法第45条の9第10項により準用)です。
評議員会を招集するには、理事は、評議員会の日の一週間(これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間)前までに、評議員に対して、書面でその通知を発しなければならない。 2 理事は、前項の書面による通知の発出に代えて、政令で定めるところにより、評議員の承諾を得て、電磁的方法により通知を発することができる。 3 前二項の通知には、前条第一項各号に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
評議員会の招集通知は、書面によることが原則です。電子メール等で送る場合は、評議員の承諾が必要です。そして第3項により、通知には第181条第1項各号の事項、すなわち日時・場所・目的である事項(議題)を記載しなければなりません。
理事会の招集通知には、これらの要件がありません。この非対称を理解しないまま、両方を同じ様式で運用している法人は少なくありません。
理事会・評議員会の定足数と決議要件
理事会の決議要件は、社会福祉法第45条の14第4項です。
理事会の決議は、議決に加わることができる理事の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合以上)をもつて行う。
続く第5項に、見落とされがちな規定があります。
前項の決議について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。
役員退任慰労金の議案で対象者が議決に加わっていないか、理事長の報酬に関する議案で当該理事長が議決に加わっていないか。指導監査ガイドラインでも「議案について特別な利害関係を有する理事が議決に加わっている場合」は文書指摘の対象とされています。
評議員会の決議要件は、社会福祉法第45条の9第6項です。
評議員会の決議は、議決に加わることができる評議員の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあつては、その割合以上)をもつて行う。
これが普通決議です。一方、第7項は3分の2以上の多数を要する特別決議の対象を列挙しています。
| 決議の種類 | 要件 | 主な対象 |
|---|---|---|
| 普通決議 | 議決に加わることができる評議員の過半数が出席し、その過半数 | 役員の選任、計算書類の承認など |
| 特別決議 | 議決に加わることができる評議員の3分の2以上 | 監事の解任、定款の変更、解散など(法第45条の9第7項各号) |
同じ評議員会の中で要件が変わるため、議事録の記載にも注意が必要です。
監事の選任議案には監事の過半数の同意が必要
役員改選の年に見落とされやすい条文があります。
社会福祉法第43条第1項は、次のとおりです。
役員及び会計監査人は、評議員会の決議によつて選任する。
理事も監事も評議員会が選任します。問題は第3項です。
一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第七十二条、第七十三条第一項及び第七十四条の規定は、社会福祉法人について準用する。この場合において、同法第七十二条及び第七十三条第一項中「社員総会」とあるのは「評議員会」と、同項中「監事が」とあるのは「監事の過半数をもつて」と、同法第七十四条中「社員総会」とあるのは「評議員会」と読み替えるものとする。
準用される一般法人法第72条は、監事の選任に関する議案の提出には監事の同意を要すると定めており、社会福祉法での読み替えにより「監事の過半数をもって」の同意になります。
つまり、監事を選任する議案を評議員会に提出するには、その前に現任の監事の過半数の同意を得ておかなければなりません。理事会で「監事選任の議案を評議員会に出す」と決議しただけでは足りず、監事の同意書が必要です。
役員改選は2年に一度、あるいは定款の定めによる周期でしか発生しないため、この手続は毎回のように失念されます。
理事長の選定と、理事長未選定の理事会で議長を務める者
理事長は理事会が選定します。社会福祉法第45条の13第2項第3号および第3項です。
2 理事会は、次に掲げる職務を行う。 三 理事長の選定及び解職 3 理事会は、理事の中から理事長一人を選定しなければならない。
ここで問題が生じます。定款で「理事会の議長は理事長が務める」と定めている法人において、役員改選の直後、まだ理事長を選定していない理事会の議長は誰が務めるのか。理事長を選ぶのは理事会、その理事会の議長は理事長、という循環です。
条文を追うと、社会福祉法第45条の17第3項にたどり着きます。
第四十五条の六第一項及び第二項…の規定は理事長について…準用する。この場合において、第四十五条の六第一項中「この法律又は定款で定めた役員の員数が欠けた場合」とあるのは、「理事長が欠けた場合」と読み替えるものとする。
読み替えられる第45条の6第1項は次のとおりです。
この法律又は定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した役員は、新たに選任された役員(次項の一時役員の職務を行うべき者を含む。)が就任するまで、なお役員としての権利義務を有する。
読み替えると、「理事長が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した理事長は、新たに選定された理事長が就任するまで、なお理事長としての権利義務を有する」となります。
したがって、前理事長が理事として再選されている場合には、この規定により新理事長が選定されるまで理事長としての権利義務を有し、議長を務められるという整理が成り立ちます。
ただし、前理事長が理事に再選されなかった場合や、定款の書きぶりによっては、この整理では対応できません。実務では、出席理事の互選により仮議長を選出したうえで理事長の選定に入る運用も行われています。
議長を誰が務めるかは、最終的に定款の定めによります。役員改選の年を迎える前に、自法人の定款の議長規定と職務代理規定を確認してください。
役員改選の年のスケジュールと会議の順序
役員改選の年、定時評議員会の日には次の順序で会議が並びます。
- 評議員選任・解任委員会 — 評議員を選任する
- 定時評議員会 — 計算書類を承認し、理事・監事を選任する
- 理事会 — 新しい理事の中から理事長を選定する
評議員が決まらなければ評議員会が成立せず、理事が決まらなければ理事長を選定できないため、この順序は動かせません。
そのすべての手前に監事監査があります。計算書類は監事の監査を受けたうえで理事会の承認を経なければならないからです(法第45条の28第1項・第3項)。
前条第二項の計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、厚生労働省令で定めるところにより、監事の監査を受けなければならない。 3 第一項又は前項の監査を受けた計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書は、理事会の承認を受けなければならない。
逆算すると、年間のスケジュールは次のようになります。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 4月〜5月上旬 | 計算書類・附属明細書・財産目録・事業報告の作成 |
| 5月中 | 監事監査(監事選任議案がある場合は監事の過半数の同意も取得) |
| 5月下旬〜6月上旬 | 理事会① 計算書類の承認、評議員会の招集決定と議題の決定 |
| 評議員会の1週間前まで | 評議員会の招集通知を書面で発送(定款で短縮可) |
| 6月 | 評議員選任・解任委員会 → 定時評議員会 → 理事会② 理事長の選定 |
| 6月30日まで | 所轄庁への届出、資産総額の変更登記 |
理事会は2回開くことになります。計算書類を承認して評議員会を招集する理事会と、理事長を選定する理事会です。これを1回で済ませようとすると段取りが崩れます。
計算書類の作成期限は、社会福祉法第45条の27第2項により「毎会計年度終了後三月以内」、すなわち6月30日です。
議事録の署名人と「賛成の推定」
理事会の議事録について、社会福祉法第45条の14第6項が定めています。
理事会の議事については、厚生労働省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもつて作成されているときは、出席した理事(定款で議事録に署名し、又は記名押印しなければならない者を当該理事会に出席した理事長とする旨の定めがある場合にあつては、当該理事長)及び監事は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
原則は「出席した理事および監事の全員」が署名します。ただし、定款で「出席した理事長」に限定する定めを置いている場合は、理事長と監事が署名すれば足ります。どちらに該当するかは、定款を確認する必要があります。
第8項も重要です。
理事会の決議に参加した理事であつて第六項の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する。
議事録に異議をとどめなければ、賛成したものと推定されます。理事の責任は、そこから始まります。
実務でみられる誤りの例
- 改善状況報告書で所轄庁に約束した事項が、評議員会の議題に反映されていない。指導監査で文書指摘を受けた法人が、改善状況報告書に「定時評議員会において理事・監事を選任する」と記載したにもかかわらず、評議員会を招集する理事会の議案には計算書類の承認しか載っていなかった、という例があります。評議員会は招集時に定めた議題以外を決議できないため(法第45条の9第9項)、そのままでは役員を選任できません。改善状況報告書を作成した担当者と、議案を作成した担当者が異なる場合に起こります。
- 監事選任の議案について、監事の過半数の同意を得ていない。理事会の決議だけで評議員会に議案を提出してしまう例です。
- 理事会と評議員会の招集通知を同じ様式で運用している。評議員会の招集通知には書面要件と議題の記載義務がありますが、理事会にはありません。逆に、理事会の招集手続は全員の同意で省略できますが、評議員会にその規定はありません。
これらはいずれも、所轄庁の指導監査でよくある指摘事項に含まれます。定足数の不足や、特別の利害関係を有する理事の議決参加は、文書指摘の対象として明記されています。
理事会・評議員会の運営チェックリスト
- 定款を確認し、評議員会の議長、議事録署名人、理事会の議長、理事会の議事録署名人の4点を書き出している
- 評議員会の議題を、招集を決定する理事会の決議で定めている
- 評議員会の招集通知を、会日の1週間前までに書面で発送している(電磁的方法による場合は評議員の承諾を得ている)
- 招集通知に、日時・場所・目的である事項(議題)を記載している
- 監事選任の議案を提出する年は、監事の過半数の同意を事前に得ている
- 特別決議(監事の解任、定款変更、解散)の対象議案について、3分の2以上の賛成を確保できるか確認している
- 特別の利害関係を有する理事が議決に加わっていないか確認している
- 役員改選の年は、理事会を2回開催する前提でスケジュールを組んでいる
- 理事長未選定の理事会の議長について、定款の定めを確認している
- 前回の指導監査の指摘と改善状況報告書の内容が、今年の議案に反映されている
まとめ
社会福祉法人の理事会と評議員会の違いを整理します。
- 理事会は業務執行の決定・理事の職務執行の監督・理事長の選定を行う機関(法第45条の13)
- 評議員会は役員の選任や計算書類の承認など、法定事項を決議する機関
- 理事会の招集通知に議題や議案書を記載する法的義務はなく、理事・監事全員の同意があれば招集手続を省略できる(一般法人法第94条準用)
- 評議員会の招集通知は書面によることが原則で、議題の記載が必要。通知に記載のない事項は決議できない(法第45条の9第9項、一般法人法第181条・第182条準用)
- 評議員会の議題を決めるのは理事会の決議
- 監事選任の議案を評議員会に提出するには、監事の過半数の同意が必要(法第43条第3項)
- 理事長は理事会が理事の中から選定する。理事長未選定の理事会の議長の扱いは定款による
- 役員改選の年は、計算書類を承認する理事会と、理事長を選定する理事会の2回が必要
条文は読めば書かれています。しかし理事会・評議員会の手続に向き合う機会は年に一度、役員改選なら数年に一度しかありません。定款と条文を並べて一つずつ確認するところから始めてください。
鯵坂税理士事務所では、社会福祉法人の理事会・評議員会の運営を支援しています。定款と法令に照らした議案書の作成、役員改選の年の段取り、監事監査から所轄庁への届出までお手伝いします。お気軽にご相談ください。
この記事で引用した法令
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